●会期
2019年9月2日(月)〜9月13日(金)
10:00〜18:30
日曜日 休廊
●ギャラリートーク・オープニングレセプション
9月2日(月) 17:00〜18:00 ギャラリートーク
加藤義夫(大阪芸術大学客員教授)×赤松亜美(アーティスト)×森 綾乃(アーティスト)
テーマ「グローバルスタンダードとしての未生空間イズム」
18:00〜19:30 オープニングレセプション
●出品作家
青木恵美子(AOKI Emiko), 赤松亜美(AKAMATSU Ami), 永山裕子(NAGAYAMA Yuko),
森 綾乃(MORI Ayano), 渡邉順子(WATANABE Junko)
そこはかとない「未生空間イズム」宣言 加藤義夫(大阪芸術大学客員教授)
日本の伝統的な美意識を継承する現代の画家たち。日本人が感じる「余白の美」の美しさを
「未生空間-美の再考」展シリーズとして展開する本展は、福岡、名古屋のアートフェアでも紹介。
今年7月に大阪のギャラリー風で開催したのち、このたび東京でも開催する。
本展は前回出品作家の永山裕子さん、渡邉順子さん、赤松亜美さんに加え今回、青木恵美子さん、森綾乃さんを
紹介するものである。20代、30代、40代、50代の日本人画家における「未生空間」、世代を超えた試みを
ここに紹介しよう。
作品に主義主張がなければ、あるいはメッセージ性がなければ、絵画は単なる装飾の一要素にほかならない。
芸術作品に主義=イズムがなければ、極論的に絵画は壁紙と同様とも考えられる。
イズムというほど強烈なものでなくともよいが、芸術にとってある種の主張は必要不可欠の要素だといえよう。
イズムとして「未生空間」を考えることの必要性を感じる。20世紀の美術動向には、主義主張というイズムが存在した。
例えば、パリを中心に広がりをみせた芸術運動にフォーヴィスム、キュビスム、シュルレアリスムがあり、戦後は
ニューヨークを中心として抽象表現主義が世界を席巻した。その後はポップアート、ミニマルアート、コンセプチュアル
アートなど、イズムよりアートという言葉が美術史の流れを決定して行った。
しかし、米ソの冷戦構造が崩壊後の1990年代から21世紀にかけて多文化主義となり、マルティカルチュラリズムとして
イズムという言葉が再び浮上してきた。美術史は欧米だけの単一のストーリーでなく、アジア、アフリカ、
ラテンアメリカなど複数のストーリー。世界的に美術史を見直す動きが生まれた。
ここで多文化主義(マルティカルチュラリズム)が、日本の戦後前衛美術「具体」を世界的に押し上げ再評価する
大きな要因をつくったともいえる。シンプルには異文化に相互理解を求め、多様な価値観を認め合うことでもある。
そこに争い事の無い世界が生まれることで、世界の安定と平和が約束されることであろう。
今年は新元号、令和元年となり新しい時代に突入したともいえる。日本史的には令和は万葉集の世界観に源泉を見出し、
今回初めて日本の古典から引用したのが令和だと聞く。以前筆者は、「未生空間-美の再考」展に寄せて、こんな文章を
書いた。
『豊かな自然を暮らしに活かしてきた日本人は、人と自然が共生して生きることを選び受け入れてきた。
自然に寄り添うことで豊かな暮らしを手に入れた。「自然との共生」は、日本の伝統と歴史が生み出した美学である。
「自然」から生まれた「無心」が「余白の美」を生み出したともいえよう。「余白の美」とは「無心」への憧れかも
しれない。自我にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きていくことは、人と自然が一体化するとも考えられる。
無の境地に出会う時、そこに美が生まれる。それは日本人の自然観とも結びついている。』
これらは日本人が持つ世界観のひとつとして、またイズムとして考えられるように思う。
令和元年における、そこはかとない「未生空間イズム」宣言である。